計算機シミュレーションやバイオインフォマティクス的手法を用いて、生体高分子の機能発現機構を研究しています。 特に、蛋白質と核酸の複合体に注目し、転写因子やヌクレオソーム、複製・修復関連因子などがどのようにして分子を認識しているか、分子レベルで明らかにする研究を行っています。 また、量子ビーム(X線、中性子線、電子線)を利用して得られた生体高分子の立体構造情報をもとにして、生体超分子の全原子座標構造モデルの構築や反応遷移状態の原子構造モデルを構築する 方法論の開発を行っています。その他、蛋白質と核酸の分子認識における溶媒効果の研究、コヒーレントX線による単粒子の立体構造決定アルゴリズムの開発を行っています。


Recent Publications

Ishida, H. (2010) Branch Migration of Holliday Junction in RuvA Tetramer Complex Studied by Umbrella Sampling Simulation Using a Path-search Algorithm. J. Comput. Chem., in press.

生命体の設計図であるDNA は、紫外線や電離放射線などの外的要因やDNA 複製のエラーなどの内的要因によって常に損傷を受けています。生物は、ゲノムの複製や安定性を保つために、DNA組換えによる損傷修復機能をもっています。 DNA組換え中のDNA構造体(DNAとDNA修復関連タンパク質RuvAの複合体)はホリデイ構造と呼ばれます(左図参照)。

このホリデイ構造のDNA組換え反応のメカニズムを理解するために、経路探索アルゴリズムを併用した改良型アンブレラサンプリングシミュレーションを開発し、これを用いてDNA組換え反応を解析しました。その結果、DNA組換え反応の自由エネルギーには2つのエネルギー障壁があり、その中間状態はホリデイ構造にある4つの酸性アミノ酸により準安定になることがわかりました(左図参照)。DNA組換えはこの中間体を経由することで、安定な組換え反応を進めていると考えられます。          


Matsumoto, A. and Ishida, H. (2009) Global Conformational Changes of Ribosome Observed by Normal Mode Fitting for 3D Cryo-EM Structures. Structure, 17, 1605-1613.

リボソームについては、さまざまな反応状態での低分解能構造データがあります。 そこで、反応状態をより詳しく調べるために、高分解能のX線結晶構造データと低分解能データを 統合してさまざまな反応状態の原子座標を構築する方法を開発しています。 左の図は、低解像度のリボソームの電子顕微鏡3次元構造(透明なシアンで表示)と、 それを再現するように構築した原子モデル構造(チューブモデルで表示)を、重ね合わせたものです。 原子モデル構造は、70SリボソームのX線結晶構造を、開発した計算機手法を用いて変形することにより構築しました。


Yonetani, Y. and Kono, H. (2009) Sequence Dependencies of DNA Deformability and Hydration in the Minor Groove. Biophysical Journal, 97, 1138-1147.

蛋白質がDNAに結合するとき、DNAに水和している水は取り除かれます。 この水和水とDNAの塩基配列の関係を分子動力学計算によって調べました。 左の図はDNAのまわりの水の分布です。計算時間を長くしていくと、水の分布がはっきりしてくるのがわかります。特に、DNAの副溝に沿って密度の高いところが存在するのがわかります。このような解析を塩基配列の異なるDNAに対して行い、4塩基配列パターンと水和の関係、4塩基配列パターンとDNAの構造やダイナミクスの関係を明らかにしました。その結果は、蛋白質が認識するDNA配列の予測やヌクレオソームポジショニング予測に有効であることを示しました。

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